テオ・金丸のブログ

真っ赤なベスパを乗り回す、顔真っ青な人のブログ

【実話シリーズ】1.小学生の時にやってた気の狂った遊び

※1この記事はその性質上、いつもと少し文体を変えてあります。

※2また、予期せず記事がメチャクチャ長くなってしまったので、読む際は時間をゆっくり取ってください。

 

 

 

―――とある田舎町で、生を受けた少年が居た。

彼の名前は、『テオ・金丸』

3歳で50音をマスターし、両親からは「将来、この子は世界を変える人材になる」と期待されて育った。

結論から言えばそんなことは無かったし、これからもその予定は無い。

今日語られるのは、彼が天才に生まれつき、狂人を経由して、遂に凡夫となり得たその過程の話である。

 

◆ 1 ◆

 

私には仲の良い友達が何人か居た。

放課後は必ず皆で私の家に集まり、トレカで遊んだりゲームしたり、溜まり場みたいになっていた。

 

1番仲が良かった友達を、仮に稲川くんとしておく。

当時の彼はドSで、テンションが上がると誰彼構わずガチビンタを食らわすという悪い癖があった。

私も何度か食らったことはあるが、1番ひどかったのが割尾くん。

彼はなぜか稲川くんから目の敵にされていて、テンション関係なくいつもガチビンタされていた。(別に仲が悪かったわけではない)

でも大丈夫。割尾くんは真性のドM。年末に方正が蝶野から受けるビンタみたいなのを食らってもニコニコしていた。

 

ちなみに、当時の稲川くんは所謂チビで、割尾くんはヒョロガリのノッポ体系だった。

チビがノッポにガチビンタを食らわす様は、見ていて結構面白かった。

 

そしてもう1人、今回の話には欠かせない友達がいる。

今田くんだ。

彼は一見するとヘラヘラしてるアホか、そうでなければ異常性癖者に見えるのだが、私たちのグループの中では1番頭が良かった。

その証拠に、今の彼は国立大を卒業し、プログラマーを目指している。

両親はどちらとも教師で、お父さんは英語がペラペラ。

ちなみに稲川くんのお父さんはパン屋さんで、私の父は単なるデブ、割尾くんに関してはお父さんが居ない。

切ない。

ともかく私たちはいつもこの4人で集まって、脳に悪い遊びばかりしていた。

 

これはそんな私たちの身に起きた、狂った体験談。

 

◆ 2 ◆

 

「ヤメロヤメロヤメロ!痛いイタイ痛い!」

 

割尾くんの大絶叫が部屋中に響き渡る。

私の両親が当時どう思っていたかは不明だが、自分の息子の部屋から拷問を受けている捕虜みたいな声が聞こえてきたら、いささか不安になると思う。

私にとってはこれは日常茶飯事で、割尾くんはいつも稲川くんにいじめられてどこかしら痛めて帰っていた。

この時の記憶は定かではないが、多分デュエルしてて割尾くんがコスい戦法を披露し、それに激昂した稲川君が割尾くんにガチビンタをお見舞いしてたんだと思う。いつもそうだったから。

 

しばらくして今度はゲームキューブを起動して、スマブラDXで遊ぶ。

ここでも割尾くんがコスい戦術で稲川くんをバーストさせ、リアルスマッシュを食らっていた。

ちなみに稲川くんはいつもサムスを使っていて、→+Bで遠距離のミサイルばっかり使ってきた。

コスいのはどっちだ。

それに飽きると今度はまたデュエルが始まり、それも飽きればまたスマブラに移行する。

これの延々ループ。金丸家においては生産性というものは皆無だった。誰も外で遊ぼうとか言わない。

 

しかし、この日は違っていた。

 

「金丸の布団ヨレヨレやな~」

 

突然、今田くんが言い出した。

確かに私の布団は当時、買ってから一度も洗っていなかった。

加えて、潔癖症と正反対に居る性格の私は、友達が靴下のまま布団に入ろうと一切構わない。

その結果、皆の汗とかいろいろ想像したくないものが布団に染み込み、ヨレッヨレになってしまったのだ。

 

「あれ?これシーツかけてんの?」

 

稲川くんが何かに気づく。そりゃシーツくらいかけるよ。

私は特に気にせずそれを眺めていたが、おもむろに稲川くんがシーツのチャックを開け始めた。

 

「シーツや!シーツや!」

 

もはや愛おしくなるほどテンションの沸点が低い。

友達ン家の布団のシーツ剥がしたくらいでテンション爆上がりしてるんだったら、高校受験で合格した時卒倒しててもおかしくないと思う。

 

「金丸のシーツや!シーツや!!」

 

今田くんも便乗する。男友達のシーツに何興奮してるんだ。

これが女の子のシーツだったら今頃死んでると思う。

 

ワチャワチャと暴れまわる2人。そのうち、稲川くんが思いついたように今田くんをシーツの中に押し込んだ。

 

「チャック締めろ!オラァ!早よしろ!

 

なぜかビンタを食らいながら、私と割尾くんで無理やりチャックを閉める。

一旦テンションの上がった稲川くんはもう誰にも止められない。欲望のままに動く暴力装置となって、現場に指揮を下す。

 

今田くんも若干のMっ気があったので、シーツ(身動きの取れない狭い場所)に押し込められるのはまんざらでもなかったようである。

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ちなみにこの時の様子を図で表すとこんな感じである。スペースに割と余裕はあった。

私のシーツはねずみ色(図では水色だけど)だったので、デカめのメタルスライムがうごめているみたいで面白かった。

 

最初はニコニコしていた今田くんだったが、自体は一変する。

 

「ヤベェ!チャックが開かねぇ!」

 

どうやらチャックが変な風にかんでしまったらしい。開かなくなってしまった。

最初は爆笑していた3人だったが、次第に緊張感が走る。

 

「このままだと今田が窒息する」

 

今考えればそんなことは有り得ないし、実際今田くんは普通に呼吸していた。

シーツに顔を押し付け、少しでも多くの酸素を取り入れようとする今田くん。

そんなことをしなくても、普通に呼吸できる。考えれば分かる。

その様子をみた私は、すかさず叫んだ。

 

「ヤベェ・・・今田が呼吸困難や!」

 

この呼吸困難というワードがツボッたのか、また稲川くんのテンションが爆上がりし、シーツ越しに今田くんの顔面をバシバシ殴り始めた。

それを見て笑う私。割尾くん。そして今田くん。

狂っていた。

 

そうこうしているうちにチャックが開き、今田くんが解放される。

彼は満身創痍といった風でその場に倒れこみ、深呼吸を繰り返していた。

そしてここにきて、私たちの中にあった何かがハジけた。

 

「シーツの中に入っても、窒息しない、安全」

 

ならばやるべきことは一つだった。

もっと大人数でシーツの中に入るのだ。

後のことは後から考えれば良い。

 

善は急げと言わんばかりに、また今田くんがシーツの中に押し込められる。

さすが経験者というか、2回目の今田くんはメチャクチャニコニコしていた。

続いて私が押し込められる。シーツの中は嫌に湿っていて、カビとかホコリの匂いがすごかった。

続いて稲川くんが入り、割尾くんの手によってチャックが閉められる。

あれは涼しい季節の事だったと記憶しているが、シーツの中は湿度がクソみたいに高く、蒸し暑かった。

加えて皆興奮しているので息が荒く、誰かの足の臭いが充満しているため居心地は最悪。

この状態で何をしようと言うのか。

 

「オイ割尾、お前見張り役な」

「俺らはこのまま・・・外出する

 

誰も異を唱えるものは居なかった。

我々三人の脳は異常なシグナルを伝達し、めくるめく非日常の世界へと旅立たせようとしていた。

 

◆ 3 ◆

3人仲良くシーツの中に入ったはいいが、問題点が山ほどあった。

まず、立って移動することが不可能なため、3人ともクレヨンしんちゃんのケツだけ歩きで移動しなければならないこと。

 

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※有名な「ケツだけ歩き」

次に、移動には3人の息をピッタリと揃える必要があるということ。

誰か一人でもケツだけ歩きが早かったり、遅かったりした場合は転倒してしまう。

また、シーツの中に入っているため視界が終わっており、前方に何があるか把握できない事。

そして、これから外出するにあたって、まず階段という大きなハードルを越えなければいけないということ。

外に出てそれからどうするかと言うこと。

 

問題は山積みだが、メンタル面ではトップアスリートに勝るとも劣らないコンディションを保持していた私たち。

興奮冷めやらぬまま、まずは一番大きな関門である階段に差し掛かった。

ちなみに、このときのシーツ内での私たちのポジション及びフォーメーションは以下の通りで、

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横一列に3人が並んで階段を下りるという方式を採用した。

小学生だから身体が小さく、横に並んでも階段の幅ピッタリだったのである。

 

ゆっくりゆっくり、3人で息を合わせながら階段を下りていく。

もし誰かが早かったり遅かったりすれば、そのまま階段を転げ落ちてしまう。

それだけは避けなければいけない。卒業式でテンション上がってふざけてたら友達の目に当たって微妙な空気になったみたいな、ああいうのだけは避けなければいけない。

 

そう思った矢先、今田くんが先走った

 

つんのめって引っ張られるシーツ。いきなりの出来事に私も稲川くんも反応できず、そのまま3人で仲良く階段を転げ落ちた。

腰や足をしこたまぶつけまくり、今田くんは稲川くんからガチビンタを食らっていた。

今田くんは笑っていた。稲川くんも笑っていた。私も笑っていた。

しかし次の瞬間、バーン!!という雷のような音が聞こえ、私たち3人は息を潜めた。

その音の主は、金丸の父だった。リビングに続く引き戸を力任せに開けた音だろう。

そしてこの後に経験したことを、私は一生かかっても忘れることができない。

 

ぼんやりとした視界の先に、パン一で仁王立ちする大男のシルエットが見える。

私の父は身長が185cmもあるため、迫力がすごい。

彼は一言も発さず、なんとなく怒った雰囲気を出しながら、右手を忙しく動かしている。

 

「ネチャネチャネチャネチャ・・・」

 

何か音がするな、と最初はそう思った。

でもそれはあまりに特徴的な音で、把握するのにそう時間はかからなかった。

 

 

それは、納豆をかき混ぜている音。

なぜ。

なぜ納豆。

 

シーツの中に入り、今しがた階段を転げ落ちた小学生3人と、音を聞きつけて納豆をかき混ぜながらやってきた身長185cmの大男。

俯瞰で見た場合、間違いなく世界で一番シュールな光景である。

 

父はしばらく無言のまま納豆をかきまぜていたが、そのうちしびれを切らしたのか私と今田くんの頭だけをスパーンとはたき、そのままリビングへと引き換えしていった。なぜ稲川くんが見逃されたのかは永遠の謎である。

 

「102、納豆シェイキングしとった」

 

今田くんがそうつぶやくと、私たち三人は声を押し殺して爆笑した。腸がねじれて一生元に戻らないかと思った。

ちなみに「102」は私の父のあだ名で、ワン・オー・ツーと読む。

由来は、父の体重が当時102kgだったことに由来する。

昔はなんとも思わなかったが、身長185cm , 体重102kg って、もはやちょっとした力士じゃないか。

ひとしきり笑った私たちは、歩を進め、玄関へと向かった。

もう恐れるものは何も無い。いつも見ている玄関が、やけに大きく見えた。

 

◆ 4 ◆

外に出て最初に思ったのが、アスファルトって意外に硬いしゴツゴツしてるなって事。

あと季節も相まってひんやりしてて気持ちいい。

私たち三人は何故かひそひそ話でゆっくりと町内を徘徊しはじめた。

私たちの後ろには割尾くんが見張り役として追従している。

彼は注意力散漫になっている私たちの目となり耳となって、何か危険が及んだ際に私たちに知らせる役目を担っていた。

 

ゆっくりゆっくり、できるだけ路肩に寄りながら徘徊する私たち。

一体何がしたいんだ?

これが何を産むというんだ?

これが誰を幸せにすると言うんだ?

なんの意味があるって言うんだ?

そんなことはどうでもよかった。

アスファルトの不機嫌な感触を頼りに、ゆっくりゆっくり。

小学6年生の3人が、シーツに入ってゆっくりゆっくり。(お子さんが居る方はこのシーンを言い聞かせてあげてください)

 

10分も徘徊した頃だろうか、私たちを未曽有の危機が襲った。

 

「オイッ、何してんのお前、危ないそっちはドブ!」

 

割尾くんの声が聞こえる。

しかしシーツの中に3人がミチミチに入っているのだから急な方向転換など出来るはずもない。

割尾くんにしたって、これからシーツがどの方向に進むかなんてわからないはずだ。

それを、「そっちはドブ」なんて、曖昧にもほどがある。

 

「うわヤベッ!オイ!オイ!」

 

 

 

落ちた。

 

しかも、一人だけ落ちた

私と稲川くんはつんのめって今田くんの方、すなわちドブの方に引っ張られる。

ちなみに「ハマった」ではなく「落ちた」という表現を用いたのは、このドブがそれだけデカかったからである。

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こうなってはもはやどうしようもない。

 

「おい割尾!手伝え!今田が落ちた!イテテ!痛い金丸ふざけんな!」

 

「やべぇ助けて」と爆笑する今田くんを、3人で引き揚げっ…ていうか、なんでこいつ国立大行けたんだ?

俺ら側の人間だったのに。すごく面白い奴だったのに。

 

悪戦苦闘しつつもなんとか今田くんを引っ張り上げた私たち。

シーツには泥水が付き、今田くんは爆笑している。

自転車で通りがかったおばさんがこっちを凝視している。

あの時顔バレしていたら、おそらく金丸家は村八分に合っていたことだろう。

 

その後は普通に徘徊して、行きとは逆の手順で階段を上り、金丸の部屋へと帰還した。

シーツを脱ぐ。大きく息を吸う。笑う。

 

その日もまた、私たちは何も得られなかった。

 

 

 

ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。

(おわり)